2008年3月29日土曜日

ベートーヴェン&富山の合唱組曲シリーズ 第3弾

ベートーヴェン&富山の合唱組曲シリーズ
2008年3月20日、新川文化ホール 大ホール (魚津市) 、14:00
大町陽一郎指揮東京フィルハーモニー交響楽団
郷土の音楽家合唱団
山本佳澄 (ピアノ)
吉村美穂 (ナビゲーター)

・岩河三郎《富山に伝わる3つの民謡》
・ベートーヴェン (リスト編) /交響曲第5番ハ短調 作品67、
 第1楽章
・指揮体験コーナー
・ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調 作品67

新川文化ホールで行なわれた、ベートーヴェン&富山の合唱組曲シリーズ 第3弾に行ってまいりました。長い行列が2階のロビーにできていてびっくりしましたが、真ん中下手側に席が確保できて、うれしい限り。

実はこのホールに来たのははじめてでしたが、なかなか良い音響ですね。残響もほどよく付いていて、オーケストラの音では、3回の公演中ベストではないかと思います。音がきれいに混ざる一方で、各楽器の音色もうまく引き立てられておりました。司会進行の方によると、指揮者の大町氏もお気に入りのようでした。

司会進行があるコンサートは、実は3回の公演中、これが唯一です。インフォーマルな感じです。

岩河三郎の《富山に伝わる三つの民謡》では、合唱の歌詞が、他の会場よりも、若干聴きづらかったかもしれません。オーケストラとのバランスや、ホールの音響など、難しい問題もあるのでしょうけれど。でもオーケストラのニュアンスは、かなり手慣れた感じに聴こえました。

この回は協奏曲がないかわりに、山本佳澄さんによるベートーヴェン (リスト編曲) のベートーヴェン/交響曲第5番 (ピアノ版) 第1楽章の演奏や、同楽章 (原曲) を使った「指揮体験コーナー」がありました。リストのピアノ盤は、オーケストラの音色的な面白さとは違い、広い音域による輝かしさを醸し出すもので、また、技術的な難しさを音楽的アピールにする作品でもあり、かなり健闘されたのではないでしょうか。

指揮体験コーナーですが、会場からは30人もの応募があり、大町陽一郎さんが子どもさん2人、大人の方2人を抽選されました。ベートーヴェンの第5を開始するタクトには、おそらく数種類のやり方があると思われます。それはおそらく、専門家にとっても難しい問題で、あらかじめオーケストラにどんな感じでアウフタクトやフェルマータを処理するか、共通認識を作っておいた方が安全と考えられます。

ですから、「指揮体験コーナー」でベートーヴェンの第5の冒頭を取り上げることについては、私は常々疑問に思っていました。そんなに難しい箇所をやらせても、うまくいかないのは当然ではないかと。

でも、大前さんが、少ない棒の振り下ろしでキューを出す方法でやられていたので、それを観て、みなさん、各々、オーケストラを指揮されていたようです。タイミングがどうしても遅くなってしまうのは、大人数の奏者を相手にたじろんでしまうところもあるからなのでしょうが、意志を強くもって曲を進めていくのは、やはりそれほど簡単にはいかないということでしょう。指揮の経験のない人にとっては、例えピアノ奏者や歌手であっても、ちょっとおいそれとすぐ指揮ができるというわけにもいかないのではないでしょうか。

このコーナーの進行は「ぶっつけ本番」的にも見えてしまったのですが、リラックスした雰囲気が出ていたのではないでしょうか。指揮棒もプレゼントして、感激されたお客さんもおられましたね。クラシックに引き続き興味をもっていただけると、オーケストラの方々もうれしいのではないでしょうか。

コンサートのメインの曲がベートーヴェンの第5交響曲であるため、結果として、この指揮体験コーナーは、作品に興味を持たせるためにも、とてもプラスになったと思います。おそらく会場の多くの方が、冒頭の指揮者に注目して、作品に耳を傾けたでしょう。大前さんがどのように「手本」を見せてくれるか、目を凝らしたでしょう。それがその後の音楽聴取にも、大きく影響したと思うのです。冒頭の単純な動機が全曲にわたる原動力にもなっておりますし、また「冒頭だけは知ってるが、その後はどんな曲になるのだろう」という好奇心も、あると思います。中学で鑑賞の時間に取り上げられたとしても、やっぱり生だと集中して聴きますし、全曲を通して聴くのは、やっぱり学校の音楽の時間では大変だと思うんですよね。

メインのべートーヴェンの第5に関しては、富山の《田園》・高岡の《皇帝》よりも、保守的な解釈に感じられました。あるいはホールの音響が、モダン楽器の響きをよりモダンらしく融合したということだったのかもしれません。この作品においても、全体が融合する一方で、それぞれの楽器の音色がきれいに浮かび上がり、力強さと流麗さの両方が体感できたのではないかと思います。

ナビゲーターの吉村美穂さん、ご苦労様です。私もコンサートのプレトークをやったことがありますが、なかなか難しいですよね。

とにかく、この手の演奏会は、私のようなスノッブなクラシック・ファンには「通俗名曲」のコンサートに考えてしまうところがあったのですが、内容的には充実していたと思います。初めて本格的にクラシックのコンサートを体験した連れの人も「良いコンサートだった」と喜んでいました。

2008年3月23日日曜日

気になる話題?

私の預かるところではありませんが、とりあえず。

富山市の文化行政の動き (「こぐれ日乗∽アーツマネジメント・文化政策・まちつかい・京都橘大学・都市環境デザイン」) 

点と線~琵琶湖と富山 (「やくぺん先生うわの空」) 

2008年3月22日土曜日

クラヴィコードのコンサート

おもしろそうなコンサートがあります。

砂原悟が弾く「クラヴィコードの植物文様」
■日時:2008年3月27日(木)19:00~  
■チケット前売り¥3000(当日¥3500)  ■定員:80名
■会場:日本キリスト教団「富山鹿島町教会」

藤枝守さんの曲を砂原悟さんが弾かれるそうで、当日は藤枝さんご自身のトークもあるそうです。クラヴィコードという楽器の音にはなかなか触れる機会がありませんし、それによる新作というアイディアも興味深いところです。

お時間のある方は、ぜひ。

http://www.milestone-art.com/htm/2008cravi.html

2008年3月16日日曜日

澤部紀行リサイタル

私は行けなかったのですが、射水市 (旧新湊市) 出身でドイツ在住のテノール歌手、澤武紀行 (さわぶのりゆき) さんのコンサートが2月10日に行なわれたそうです。関連情報のリンクを貼っておきます。

久々にmarshalさんとの出遭い (「淳ちゃん日記」) →該当部分のウェブ魚拓
澤武紀行 (「しゅりの極楽な日々。」) →当該部分のウェブ魚拓

澤武 紀行 ~Tenor~ (オフィシャル・ページ)
・澤武紀行、「温故知新」を知る町 (「PORTRAM.NET」)→ウェブ魚拓
ひと:澤武紀行さん 北陸の尼寺育ちのオペラ歌手 (「毎日新聞」) →当該部分のウェブ魚拓

2008年3月10日月曜日

金沢歌劇座館名改称記念 ビゼー 歌劇《カルメン》


2008年3月7日 (金)、 金沢歌劇座、午後6時半開演

●演奏
本名徹次指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサート・マスター:松井直)
音楽監督:直野資,演出:直井研二

カルメン:小泉詠子(メゾ・ソプラノ),ドン・ホセ:志田雄啓(テノール),エスカミーリオ:安藤常光(バリトン),ミカエラ:岩田志貴子(ソプラノ),フラスキータ:竹多倫子(ソプラノ),メルセデス:武部薫(メゾ・ソプラノ),モラレス:駒田敏章(バリトン),スニガ:山田大智(バリトン),ダンカイロ:小林大祐(バリトン),レメンダード:新海康仁(テノール)
合唱:金沢カペラ合唱団(合唱指揮:山瀬泰吾),児童合唱:OEKエンジェルコーラス(指導:山崎陽子,清水志津)
フラメンコ:金沢美術工芸大学フラメンコ部(指導:忠縄美貴子)

舞台監督:黒柳和夫(金沢舞台),美術:金沢美術工芸大学,衣装:下斗米雪子(㈱エフ・ジー・ジー),衣装(カルメン):金沢美術工芸大学,メイク:金沢ビューティーアカデミー,特殊照明:北陸先端科学技術大学院大学,字幕:金沢美術工芸大学 その他

上記キャスト詳細は、OEKfan オーケストラ・アンサンブル金沢を応援するページからの転載です。なお「OEKfan」のレビューは、後々貴重な資料となるのではないかと思いますので、ご覧いただければ幸いです。

金沢というと厚生年金会館にはご縁があったのですが、かつて金沢市観光会館と呼ばれていた金沢歌劇座館に来たのは初めてかもしれません。あるいは行ったとしても、かなり幼い頃ではないかと思います。今回は、館名改称記念ということで、日本でもっとも人気があるオペラ演目の一つ、《カルメン》を観てまいりました。歌劇座の建物は、とても私にとっては懐かしく感じられるもので、売店があったり自動販売機があったり、地下には食堂もあるようです。むかしの富山市公会堂を思い出してしまいました。あの座席の狭さも、今となってはレトロに感じられますね。もっとも、ボストンのシンフォニー・ホールなんて、もっと時代がかってます。

舞台も、かつての多目的ホールを彷彿とさせる横幅と奥行きです。石川県立音楽堂に慣れた耳には残響がかなり短く聴こえるはずですが、こういうホールは、かつてかなり全国的に多く存在していたのですし、残響の長さだけがホール音響の良さに直結するわけでは、もちろんありません。

それよりも、今回の上演では、多目的ホールの限られたスペースで、いかに本格的なオペラ上演をするかというのが一つの課題でありましょうし、その点では、照明による表現も含めた、効果的な舞台装置によるものであったと思います。舞台袖 (花道とは呼べないだろうなあ) や客席通路も使われていましたね。緞帳を演目ごとに作るのは、いまや常識のようになっていますが、これも実に良かった。開演前から、雰囲気が盛り上がっておりました。

ソリストは芸大大学院を中心とした歌手陣でした。私もフロリダ州立大学で、こういう大学院生+α的なプロダクションに接してきただけに、感慨深いものがあります。主役の小泉詠子さんなどは、細かな手の仕草なども堂に入っていて、目と耳が引きつけられました。《花の歌》を歌ったドン・ホセ (志田雄啓さん) にも大きなブラボーが飛んでいたように記憶しております。

今回は合唱がよく聴こえました。あのホールのサイズだと、とても良いのかもしれません。日常生活ではやることのない兵士の役っていうのは、歩き方なども注意が必要なようです。字幕担当の方はお疲れさまでした。私の友人も20年ほど前、新潟で《椿姫》をやった時に字幕を担当したんですが、楽譜を見ながらボタンを押すのは大変だって言ってました。

OEKは名サポートでした。というか、こういう地方オペラにおけるプロ・オケの役割というのは、私が考えていたのよりも、はるかに大きいものだという気がしました。3時間近くの上演でしたが、あっという言う間に時間が過ぎたのにも、オーケストラの技術の確かさ、表現力があったからだと思います。《カルメン》は組曲で演奏すると「通俗名曲」というイメージが先行してしまうのですが、全曲通しでやると、前奏曲/間奏曲のドラマ本体に対する意味、またそれらに現れるさまざまなモティーフの重要性が認識できると思います。

一回限りの「記念公演」とはいえ、これからこういったレベルで石川のオペラ上演が続いていくのでしたら、それは大変素晴らしいことだと思います。歴史の1ページを開くことができたのか、今後の上演にも注目していきたいと思います。12月には《ラ・ボエーム》が予定されているとのこと。富山では、これとは別に、9月に同演目が予定されているだけに (→特設サイト) 、今年の後半はプッチーニ日和ということになるんでしょうか。

2008年3月9日日曜日

丘声会オペラ協会公演


丘声会 (きゅうせいかい) オペラ協会公演
小林源治:歌劇《牛若丸》
牛若丸:竹林順子、大天狗:碓井智子、烏天狗:田中礼子、吉沢早紀、畠 啓子、与沢桂子、北嶋ミク、浅岡光代指揮ヤマハ ステージア (ELS OIC) 伴奏
林光:歌劇《あまんじゃくとうりこひめ》
うりこひめ:河内麻美 (ソプラノ) 、あまんじゃく:広瀬美和 (ソプラノ) 、ばっさ:碓井智子 (メゾ・ソプラノ) 、じっさ:内山太一 (バリトン) 、けらい:森清篤実 (テノール) 、とのさん:黒崎隆憲 (バリトン)
浅岡節夫指揮、ヤマハ ステージア (ELS OIC) 伴奏

2008年03月09日
富山県教育文化会館、14:00開演

久しぶりに丘声会のオペラ公演を観てまいりました。私が1989年にハイドンの《月の世界》を観にいった時はオーケストラとの共演で、なかなか本格的な上演だなあと感心もしたんですが、いつのころからエレクトーン伴奏になっているのでしょうか? 私もエレクトーンで音楽を始めたとはいえ、クラシックをやってる人間にとっては、電子楽器に若干抵抗があるというのも事実だったりします。ちなみに今回の上演では声楽陣もマイクを付けてました。ミュージカル風の上演、とでも言うんでしょうか。

それでも《あまんじゃくとうりこひめ》は、声楽陣がよかったですし (河内麻美、碓井智子、広瀬美和、内山太一ほか) 、ヤマハのステージアは、代用楽器として、それなりの役割を果たしていたように思います。林光のオーケストレーションの妙技が楽しめたかもしれません。この演目には、素直に感動できました。ところで、あまんじゃくの突飛な格好は、あれでいいのかな。日本の民話とはまるで別世界のピエロみたいな格好だったけど。セットはこの演目も《あまんじゃく》も、よかったと思います。オーバードで大きな演目っていうのは、難しいのかなあ。

《牛若丸》の方は、マイク使用が声楽陣の声量と発声をカバーしていたのでしょうか。演技は、なかなかだったと思います。

それにしても丘声会の地道な、そして継続的な活動は評価したいですね。

2008年3月8日土曜日

古楽への誘い〜古楽セミナー講師によるコンサート〜


・古楽への誘い〜古楽セミナー講師によるコンサート〜 →詳細

2008年03月08日
富山市民プラザ4Fアンサンブル・ホール 開演 : 18:00
出演:有田正広(フラウト・トラヴェルソ)、中村 忠(フラウト・トラヴェルソ)、小池耕平(リコーダー)、戸田 薫(バロック・ヴァイオリン)、平尾雅子(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、有田千代子(チェンバロ)

豪華メンバーによるバロック音楽の夕べ。印象に残ったのは、フラウト・トラヴェルソ+リコーダーで演奏したテレマン/《ターフェルムジーク》第2集からの四重奏曲、そして最後のF. クープラン/コンセール第8番《劇場風》でしょうか。冒頭1曲は、到着が遅れたため、聞き逃してしまいました。

聴衆のみなさんも、それなりにこの音楽に通じておられる方々という印象を受けました。アンサンブル・ホールは、バロック音楽をやるにはいいホールですね。

→リコーダー奏者小池耕平さんのブログ

2008年3月6日木曜日

ベートーヴェン&富山の合唱組曲シリーズ


明日3月7日の『北日本新聞』、芸能とやま欄の「クロスレビュー」にて、このコンサートを取り上げます。字数の関係で2月25日の高岡公演のみにしましたが、富山公演にも行きました。以下、簡単ではありますが、富山公演の感想をメモしておこうと思います (なお、新聞記事の方は「で・ある」調の文体になっております) 。

2月24日、県民会館で行なわれた第1弾のコンサート「ベートーヴェン&富山の合唱組曲シリーズ」第1弾は、独奏者に高岡市出身ピアニスト、桑生美千佳さんを迎え、ベートーヴェンの《皇帝》協奏曲を演奏しました。テンポをがっちりと保持しながら、美しい打鍵で魅了するタイプの解釈と思いました。端正な弾きっぷりを貫徹し、そのスタイルは、オーケストラ演奏にも影響していたように思います (これは高岡公演にも見られた独奏者とオーケストラとの相互作用だと思います) 。

メインの《田園》交響曲は、すっきりとした響きの中に様々なフレーズが見え隠れし、この曲が、音による標題の描写だけでは語れない作品であることを、改めて認識させてくれたのではないでしょうか。交響曲の形式的な約束事を踏襲しながら、そこに文学的発想を盛り込んだドラマがある、ベートーヴェンの名作でありましょう。

富山県民会館の音響は、合唱には良かったと思います。岩河三郎の混声合唱組曲《富山に伝わる三つの民謡》では、その歌詞が高岡文化会館の時よりも、はっきりと聴こえたように思われたからです。舞台の奥行きがない分、客席には届きやすかったんでしょうか。オーケストラ (大町陽一郎指揮東京フィル) の音色の混ざり具合については、高岡文化会館の方が私の好みには合っていました。楽器の音それぞれを際立たせるには、あるいは富山県民会館の方がいいのかもしれませんが。

いずれの公演も、例えば石川県立音楽堂のような、残響の長いホールに慣れていると、かなり性格が違いますね。共通しているのは、どちらも独奏の音、特に細かいフレーズが明確に聞こえてくるということでしょうか。

(追記) 
この演奏会を扱ったブログ記事へのリンクを貼っておきます。

2008年3月3日月曜日

ラ・フォル・ジュルネ金沢


石川県立音楽堂の中にあった看板です。
公式サイトはこちら→http://www.lfjk.jp/

2008年3月2日日曜日

金聖響/OEKのブラームス4番

日3月1日、金聖響指揮オーケストラ・アンサンブル金沢によるブラームス4番 (公開録音セッション) を聴いてきました。 録音会場は、もちろん石川県立音楽堂です。

第1 (CD) ・第3 (実演) を聴いた時と同様、頭が冴えてくる解釈で、ティンパニーの強打は強烈でした。粗削りのブラームスと言われるかもしれませんが、決して雑だとは思いません。ただ、おそらくメランコリックで流れるような解釈を念頭に描いている人には抵抗があるのかもしれません。とはいえ、第4楽章のトロンボーンのコラールが頭から離れなかったということもあり、抒情的な部分も、さりげなく耳に入ってきていたようです。

余韻を一息感じてからの拍手で、会場の雰囲気は良かったと思います。この日録音されたブラームスの第4交響曲のCDは、今年の秋、Avexからリリースされるとのこと。

コンサート後、せっかく金沢に来たのでレコード・ジャングルに寄りたかったんですが、物書きの仕事があったので、やめました (^^;;